結論から言うと、ケラッセ東京の季節メニューは「当日の朝から始まっている」。ウニ、アワビ、牡蠣といった三陸の食材が一皿として完成するまでには、開店前から積み上げる細かな作業と判断の連続があります。今日はその一日を、シェフの坂東の視点から追いかけてみます。
こんにちは、シェフの坂東です。54歳、調理歴30年。今の季節(11月)は三陸の食材がとくにおいしい時期です。牡蠣は身がしっかり充実してきて、ウニは濃厚さが増す。アワビも岩手の海域でじっくり育ったものが届くようになる。そんな食材たちを、新宿の住宅街の小さな厨房でどう料理に変えているのか、今日は包み隠さず書いてみようと思います。
こんな方におすすめ
- ✅ 新宿で騒がしくない、落ち着いた食事の場所を探している方
- ✅ 三陸のウニ・アワビ・牡蠣がどのように料理になるのか気になる方
- ✅ シェフが食材をどう選び、どう仕上げているか知りたい方
- ✅ 夫婦や友人と会話しながらゆっくり食事を楽しみたい方
- ✅ 旬の食材を使った季節感のある料理を体験したい方

午前中:食材が届く。その「状態」を見ることから一日が始まる
開店は15時ですが、仕込みは午前中から動いています。三陸からの食材便が届くのは、たいてい朝の10時前後。箱を開けた瞬間から、今日のメニューの組み立てが始まります。
牡蠣は殻のままで届きます。まずは重さ、においを確認する。殻を軽く叩いて音を聞くこともある。仕入れの裏側でシェフが語っているように、産地名だけで食材を選ぶことはしていません。同じ三陸産でも、今日届いたものが今の自分の料理に合うかどうか、直接手で確かめる作業が必要です。
ウニは、この時期(11月)は宮城産のムラサキウニが多くなります。夏場のバフンウニとは風味が違って、少し甘みが穏やかで旨みが深い。その特性に合わせて、合わせる食材や火の入れ方を変えます。アワビは岩手・三陸沿岸のもの。生きた状態で届くので、扱い方ひとつで食感が変わる。だから受け取りと同時に、その日の調理スケジュールが頭の中で動き始めます。
この時間帯にやっていることは「確認」だけじゃない。「今日は何を主役にするか」という判断でもあります。コースのなかで何品目に何を置くか。生で出すか、火を入れるか。ワインとの流れを考えると、順番も変わってくる。午前中の30分が、その日の料理全体の骨格を決めます。
仕込みの話を読んで、「実際のメニューが今の季節どうなっているか」が気になってきたのではないでしょうか。LINEでは季節メニューの更新情報や限定キャンペーンを随時お伝えしています。友だち追加は無料で、登録するだけで生牡蠣10個盛りが半額になる特典も受け取れます。
午後の仕込み:ウニ・アワビ・牡蠣をそれぞれに「ふさわしい状態」に整える
食材の確認が終わったら、仕込みに入ります。ここが一日でいちばん集中する時間帯です。
牡蠣は生で出すものと、加熱するものを分けます。生牡蠣はシンプルに殻を開けて提供するだけに見えますが、殻の開け方ひとつで中の汁(グリコーゲン液)の量が変わる。できるだけ汁をこぼさずに開けることが、生牡蠣のおいしさをそのまま届ける条件です。生牡蠣・焼き牡蠣・蒸し牡蠣、それぞれの違いと食べ方については以前書きましたが、调理法を変えると牡蠣の味わいはまったく別物になります。
アワビの仕込みは少し時間がかかります。生きたアワビはそのまま切ると身が硬く締まるので、適切なタイミングで処理する。今の時期は薄切りにしてカルパッチョ仕立てにすることが多い。三陸の昆布だしを少し合わせて、オリーブオイルと柑橘で仕上げると、アワビの磯の風味とイタリアンの組み合わせが自然につながります。
ウニは仕込みというより「触らない」ことが仕込みです。崩れやすいウニは、無駄に動かすと形が崩れて提供時の見た目が変わる。箱から取り出すのは、できるだけ提供直前に近いタイミングに合わせます。コースの流れを考えると、ウニをどのタイミングで使うかが先に決まっていないと、仕込み全体のスケジュールが組めない。だからウニのポジションを決めることが、仕込みのなかで最も早い判断になります。
✓ ここまでのポイント
- 食材は産地名ではなく「今日届いたものの状態」を直接確認してから調理法を決める
- ウニ・アワビ・牡蠣はそれぞれ扱い方が異なり、仕込みの順番にも理由がある
- 午前中の食材確認とウニのポジション決定が、その日のコース全体の骨格になる
アワビのカルパッチョ、ウニの温かい一品、三陸牡蠣の生・加熱と続く10品コース——文章で読むと順番の意図がわかっても、実際に口で確かめないと食材の状態や提供のペースは体験できません。空席状況と現在のコース内容はWEB予約ページから確認できます。
開店前:厨房から客席まで「ゆっくり食べてもらえる場」を整える
仕込みが一段落すると、開店準備に入ります。若松河田駅から徒歩3分の場所にあるこの店は、新宿の繁華街の中心からは少し離れた住宅街に位置しています。正直、立地だけ聞くと「わかりにくい場所にある店」に聞こえるかもしれない。でも、それが意図でもあります。
新宿の駅前や大通り沿いの飲食店は、回転率を上げることが求められる構造になっていることが多い。大人数を短時間で捌くことが経営の軸になると、自然と料理も接客もそのスピードに合わせた作りになります。それはそれで一つの形ですが、ケラッセ東京が目指しているのは違う場所です。
32席、個室なし。夫婦が向かい合って話しながら食べられる距離感。友人同士が料理の話をしながら一皿ずつ楽しめるペース。そのためのテーブルの間隔、照明の明るさ、音楽の音量。開店前に自分で確認します。「静かすぎると会話が筒抜けに聞こえる」「明るすぎると料理の色が飛んで見える」。細かいことですが、お客様がゆっくりできるかどうかは、こういう積み重ねで決まる。
ワインの温度も確認します。白ワインは牡蠣・魚介に合わせた温度帯に整えておく。牡蠣に合わせるワインの選び方は料理との組み合わせで変わりますが、温度管理は料理が始まる前の準備段階で決まります。
営業中:コースの流れを「会話のリズム」に合わせて動かす
15時に開店すると、まず水・木・金の平日は近隣の方が多い。土日は少し遠くから来てくださる方が増えます。11月の週末は、「久しぶりに夫婦でゆっくり食事がしたい」という相談をよくいただきます。誕生日や結念日に使っていただくこともある。
こういった場合、コースの提供ペースは特に意識します。急いで次の皿を出さない。でも間が空きすぎて話が途切れる感覚も避けたい。お客様のグラスの減り具合、会話の盛り上がり、前の皿を食べ終えるタイミング。それを厨房から確認しながら、次の一皿を出すタイミングを決めています。
今の時期の季節コース(10品、8,800円)は、三陸の牡蠣とウニを中心に、岩手・東北の肉や野菜を組み合わせた内容です。生牡蠣から始まり、アワビのカルパッチョ、ウニを使った温かい一品と続く流れのなかで、料理のボリューム感と味の強度が自然に上がっていくように順番を組んでいます。ワインとの相性も考えながら、白→オレンジワイン→軽めの赤と進む場合が多い。料理と飲み物が一緒に流れていく感覚を、一つの食事として楽しんでもらうのが狙いです。
営業後:明日の食材確認と、今日の一皿を振り返る時間
22時に閉店すると、片付けと同時に翌日の食材状況を確認します。残った牡蠣の数、ウニの残量、明日届く予定のもの。それを踏まえて翌日のコース内容の骨格を頭の中で組み立てる。これが「明日の仕込みの午前」につながります。
今日出した一皿が、お客様にどう届いたかを考える時間でもあります。「あの温度のウニ、少し早く出しすぎたかもしれない」「アワビの薄さ、もう少し厚めでもよかったか」。そういう細かい振り返りが、次の日の料理に反映されます。30年やっていても、毎日この繰り返しです。
新宿という街で、騒がしくない食事の場を作るのは、立地だけでできることじゃない。食材の選び方から、仕込みの判断、提供のタイミング、客席の空気感まで、一日分の積み重ねがあって初めて「ゆっくりできた」という感想になる。それを続けることが、ケラッセ東京のやっていることだと思っています。
まとめ:三陸の食材が「一皿」になるまでの一日
午前中の食材確認から始まり、仕込み、開店準備、営業、そして振り返りまで。ウニ・アワビ・牡蠣が季節メニューとして完成するまでには、開店前からの積み上げがあります。新宿の住宅街で、夫婦や友人がゆっくり会話しながら楽しめる食事の場を作るために、厨房ではこういう一日が動いています。
もし予約や内容についてご質問があれば、お気軽にお電話ください。
📞 03-6380-0253(営業時間:水〜日 15:00〜22:00)
騒がしくない場所で、旬の三陸食材をワインと一緒にゆっくり楽しみたいという気持ちが固まったなら、次は日時を押さえるだけです。食べログのWEB予約から席とコースを予約できます。
