シェフのこだわり解説|旬をコース料理に組み込むときに考えていること

この仕事を30年続けてきて、ずっと自分に問い続けていることがあります。

「特別感と気軽さは、両立できるのか」。

高級レストランに行けば、確かに料理はすごい。でも帰り道に、なんとなく疲れているときがある。逆に居酒屋はリラックスできるけれど、食べ終わったあとに「もう少し、ちゃんとしたものが食べたかったな」と感じることもある。お客様も、きっと同じことを感じているはずです。

ケラッセ東京のコース料理を組み立てるとき、私がいちばん頭に置いているのはそこです。堅苦しくない。でも、ちゃんとおいしい。旬を使いながら、その両方を一晩のコースの中で実現すること。今日はその「裏側」を少し話してみようと思います。

こんな方におすすめ

  • ✅ 高級店ほど緊張せず、居酒屋より少し特別な夜を求めている方
  • ✅ 旬の食材がコースにどう活かされているか知りたい方
  • ✅ 三陸の牡蠣や魚介をコースで楽しんでみたい方
  • ✅ ワインと料理を一緒にゆっくり楽しみたい夫婦・カップル
  • ✅ シェフが何を考えながら料理を作っているか興味がある方
シェフのこだわり解説|旬をコース料理に組み込むときに考えていること | 三陸ワイン食堂 ケラッセ東京

「旬を入れる」だけでは、コースにならない

旬の食材を使うことは、料理人として当たり前のことです。でも「旬だから使う」だけでは、コース料理にはなりません。

コースというのは、一皿ずつが独立した料理ではなく、一晩の流れとして設計するものです。最初の一口から最後の一皿まで、お客様の気分と食欲がどう動くかを先読みしながら組み立てる。旬の食材は、その「流れ」の中にどこで、どんな形で登場するかが大事で、単純に「今が旬だから入れました」では、料理の密度は上がりません。

たとえば今の時期(10月下旬)は、三陸の牡蠣が水温の下がりとともに身が締まり始め、旨味が凝縮してくる季節です。同時に、岩手の山側からは秋の野菜が入ってくる。この二つを並べるとき、私が考えるのは「対比」です。海の旨味と、土の甘み。どちらかを主役にして、もう一方を添えるのではなく、互いが引き立て合う皿の配置を考えます。

三陸の食材についての詳しい背景は、三陸の魚介を東京で味わう|食材の特徴から仕入れ、料理になるまでにまとめていますが、食材の理解があってはじめて、コースの中での使い方が決まってきます。

旬の牡蠣やウニが「今どんな状態か」は、記事を読んだだけではなかなか追いきれないと思います。季節ごとのコース内容や限定の食材情報は、LINEでお知らせしています。友だち追加は無料で、登録するとすぐに生牡蠣10個盛りの半額特典も受け取れます。

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「緊張させない」ための皿順の組み方

堅苦しくないコースにするために、私が特に意識しているのが「最初の2皿」です。

初めてケラッセに来てくださるお客様は、コース料理に少し身構えている方も少なくありません。「何が出てくるかわからない」「マナーが心配」という空気が、テーブルにうっすら漂っていることもある。それを最初の一皿でほぐすことが、私の仕事の最初のステップです。

だから最初は、難しい説明が必要ない皿から始めます。見た目でわかる、食べ方がシンプル、でも素材の良さがちゃんと伝わる。生牡蠣や薄造りのカルパッチョは、その点でとても使いやすい皿です。「あ、おいしい」という素直な反応が出てきたタイミングで、少しずつ料理の説明を加えていく。そこから先は、お客様が自然にこちらのペースに乗ってきてくれます。

カルパッチョの仕立て方については、旬の鮮魚を深掘り|カルパッチョで味わう理由とシェフの仕立て方で詳しく書いています。「なぜカルパッチョなのか」という理由も含めて読んでいただくと、コースの入口としての役割が見えてくると思います。

2皿目以降は、じわじわと料理の重心を上げていきます。火を入れた魚介、温かい皿、ソースを使った料理へ。この「重心の上がり方」が自然であれば、お客様は堅苦しさを感じることなく、気づいたら特別な夜の中にいる、という感覚になります。それが私の目指すコースのリズムです。

✓ ここまでのポイント

  • 旬の食材を「使う」だけでなく、コースの流れの中でどこに置くかが大事
  • 最初の2皿で緊張をほぐすことが、「気軽なのに特別」を作るための起点になる
  • 海の旨味と土の甘みなど、旬の食材同士の「対比」がコースに奥行きをもたらす

「緊張させない2皿目から始まるコース」という話を読んで、実際どんな流れで食べられるのか気になった方もいると思います。空席の確認とコース予約は食べログのWEB予約から確認できます。席数が32席のため、週末は早めに埋まることが多い状況です。

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お客様には言わないけれど、実はここを一番考えている

コースを組むとき、料理の内容と同じくらい時間をかけているのが「ワインとの合わせ方」です。

ケラッセはワイン食堂ですから、料理だけでなく、グラスに何が入っているかも含めて一晩の満足度が決まります。でもこれは、料理を説明するときにいちいち「このワインはこの料理に合わせるために選んでいます」と言うわけではない。気づいたら料理とワインが噛み合っていた、という体験をしてもらうほうが、ずっと気持ちがいいから。

たとえば牡蠣の皿には、酸がきれいでミネラル感のある白を合わせます。牡蠣の磯の香りと、白ワインの塩気が近い場所にあると、料理が終わったあとの余韻が長くなります。逆に肉の皿に移るとき、グラスも赤に切り替わることで、「次の章に入った」という感覚がお客様に自然に届く。ワインは料理の伴奏ではなく、コースの流れを作る道具の一つだと思っています。

牡蠣の調理法ごとの考え方については、牡蠣を生・焼き・蒸しで仕立て分ける理由にも書いていますが、調理法が変わればワインの選び方も変わります。この連動を、コースの設計段階から考えておくことが、「堅苦しくないのにちゃんとした夜」を作るための見えない仕掛けです。

秋冬のコースで、今考えていること

10月に入ると、三陸の牡蠣は夏のものとは別の顔を見せ始めます。身の透明感が増して、塩気と旨味のバランスが整ってくる。生で食べるのに、年間で最もいい時期のひとつです。

今のコースでは、その牡蠣を生でまず味わってもらったあと、火を入れた別の調理法で再び登場させています。同じ食材が、温度と火入れによって全然違う表情を見せる。これは説明しなくても、食べた瞬間に「あ、さっきとは違う」と感じてもらえます。そこに気づいてもらえると、コースを食べることへの興味が一段上がるんです。

ウニも今の季節のコースで使う食材のひとつです。三陸産のウニを複数の料理に組み込んだ構成は、「ウニをこんなふうに食べたことなかった」という声をよくいただきます。生で食べるだけが食材の楽しみ方ではない、ということを、コースという形で伝えられるのが、私がこの仕事で好きなことのひとつです。

季節のコースの楽しみ方全体については、季節のコース料理の楽しみ方|旬の食材を一皿ずつ味わうディナーにまとめています。初めてコース料理を楽しむ方にも読みやすい内容ですので、合わせて読んでみてください。

まとめ|旬とコースと、気軽さの関係

長く料理を作ってきて、「旬を使うこと」と「特別感を出すこと」と「気軽さを保つこと」は、実はすべて同じ方向を向いていると感じています。

旬の食材は、素材自体のポテンシャルが高いから、余計な手をかけすぎる必要がない。シンプルな調理でも、ちゃんとおいしい。それがそのまま、堅苦しくない料理の自然体につながります。反対に、技術でごまかそうとするとき、料理は重くなる。その重さが、お客様に伝わると緊張感になってしまう。

私がコースを組むとき、最終的にいちばん大事にしているのは「食べ終わったあとのお客様の顔」です。ちゃんと満足して、でも疲れていない。また来たいと思ってもらえた。その顔が見えたとき、今夜のコースは正解だったと思います。

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「ちゃんとおいしいものを、気軽に楽しみたい」――その一晩を実現するために、コースの皿順からワインの選び方まで考えているという話が、少し伝わったなら嬉しいです。まずは席を確保してから、当日の流れはお任せください。WEB予約で日時とコースを選べます。

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