結論から言うと、三陸魚介を「ちゃんとおいしく食べる」ために、一番大事なのは火入れの温度帯と、素材に合わせた味のつけ方の順番です。この2点を外すと、どんなに良い食材を使っても、料理として完成しない。今日はその話をします。
シェフの坂東です。創業8年、ずっと三陸の牡蠣や鮮魚を東京で料理してきましたが、「なぜ魚介料理はここまで難しいのか」という問いに、自分なりの答えが出てきたのはここ数年のことです。この記事では、普段お客様に説明しないような「料理の裏側」を、できるだけ正直に書いてみます。
もう一つ、正直に言っておきたいことがあります。ケラッセ東京は若松河田駅から徒歩3分の住宅街にある店です。新宿の繁華街とは少し違う場所にある。それは立地の話だけでなく、店の「作りたい時間」の話でもあります。騒がしい居酒屋では食べられないものを、ここでは出したい。そのためにこだわっている料理の話が、今日の本題です。
こんな方におすすめ
- ✅ 新宿の居酒屋では物足りない、ゆっくり食事できる店を探している方
- ✅ 三陸の牡蠣や魚介が好きで、料理としての深さを楽しみたい方
- ✅ シェフがどんな考え方で料理を作っているか知りたい方
- ✅ ワインと一緒に、素材の味を引き出した料理を楽しみたい方
- ✅ 誕生日や記念日など、少し特別な夜を過ごせる店を探している方

「ゆっくり食べてもらう」前提で、火入れを設計する
新宿の繁華街に多い居酒屋は、回転数が命です。短時間でたくさんのお客様を通すために、料理は「早く出る」ことが優先される。そういう環境では、素材の火入れを丁寧に設計する理由がそもそもない。
うちは違います。水曜から日曜の15時から22時という営業時間で、32席の小さな店。お客様に「今夜はここで過ごす」という前提で来てもらいたいと思っているので、料理の出し方も時間の流れも、ゆっくりを基準に作っています。
その前提があるから、火入れに時間をかけられる。たとえば牡蠣を焼くとき、強火で短時間というアプローチもあります。それはそれで一つの答えです。でも僕がやりたいのは、牡蠣の中心温度をコントロールしながら、外は香ばしく中はぎりぎり火が通った状態を作ること。その数十秒の差が、料理として出せるかどうかの境目になる。
三陸の牡蠣は身が大きい。大きい分、火が入りすぎると縮んで固くなる。縮む手前で止める判断は、毎回その日の牡蠣のコンディションを見ながらやっています。産地や季節によって身の水分量が変わるので、同じ時間・同じ火力で焼けばいいというものではない。牡蠣を生・焼き・蒸しで仕立て分ける理由についても別の記事で書いていますが、調理法ごとに火入れの考え方はまったく異なります。
火入れや塩のタイミングにここまでこだわっている店があると分かっても、「実際どんなメニューが今あるのか」が見えないと、足を運ぶ判断はしにくい。LINE友だち追加で、季節メニューの情報やキャンペーン内容をタイムリーに受け取れます。さらに生牡蠣10個盛りが半額になる限定特典も付いてくるので、来店前の情報収集にそのまま使えます。
素材に「先に塩をする」か「後にするか」で料理が変わる
魚介料理で僕が特にこだわっているのが、塩のタイミングです。「塩をする」という行為は、味をつけるためだけにやっているわけではない。
魚に先に塩をあてると、浸透圧で水分が出てきます。それを拭き取ってから焼くと、皮はパリッと仕上がり、身はしっかりした食感になる。一方で牡蠣は先に塩をしすぎると身が縮む原因になるので、タイミングを変えます。カルパッチョに仕立てる鮮魚は、塩をするタイミングと、オイルをかけるタイミングと、酸を加えるタイミングをそれぞれずらす。この「ずらし方」が、素材の味をそのまま前に出すか、料理として一段深めるかの分かれ目です。
お客様には料理が皿に乗った状態でお出しするので、この過程は見えない。でも僕がここにこだわっているのは、見えないところに手をかけた料理しか、「食べてよかった」という感想につながらないと経験的に分かっているからです。30年この仕事をしてきて、それだけははっきり言えます。
カルパッチョで鮮魚を味わう理由とシェフの仕立て方について、別の記事でも詳しく書いています。素材ごとの仕立ての違いに興味がある方は読んでみてください。
✓ ここまでのポイント
- 三陸魚介の火入れは「ゆっくり食べてもらう」前提で設計している。回転重視の店とは根本的に考え方が違う。
- 塩をあてるタイミング・オイルをかける順番など、見えない工程にこそ料理の差が出る。
- 産地・季節ごとに食材のコンディションが変わるため、毎回「その日の素材」を見て判断している。
「新宿でゆっくり魚介を食べたい」という気持ちが固まってきたなら、次は日時を押さえるだけです。食べログのWEB予約から空席確認とコース予約が一度にできるので、希望の日程を先に確保しておくのが確実です。
「新宿で魚介をちゃんと食べたい」という需要に、どう答えるか
よくいただくご相談があります。「新宿近くで、ゆっくり魚介を食べられる店が見つからない」というものです。気持ちはよく分かります。新宿の繁華街で探すと、チェーンの居酒屋か、大箱のにぎやか系か、どちらかになりやすい。静かに座って、料理をちゃんと味わいながらワインを飲める場所というのは、意外と少ない。
若松河田という場所は、新宿から一駅か二駅という距離感でありながら、住宅街の中にある。駅から徒歩3分で来られるので不便ではないけれど、繁華街の喧騒からは外れている。ケラッセ東京はそういう場所に店を構えています。
うちに来てくれるお客様の多くは、40〜50代の夫婦やカップル、友人同士での会食です。「久しぶりに会ったから、ちゃんとした場所で食べたい」「記念日だから、落ち着いた店を探した」という理由で来てくれる方が多い。そういうお客様に、三陸の牡蠣・魚介を料理としてきちんと出す。それがこの店の役割だと思っています。
チョッピーノとパスタ――魚介の「旨みを重ねる」料理の考え方
単体で素材を出すだけでなく、魚介の旨みを重ねて一つの料理に仕上げるアプローチもあります。チョッピーノはその代表です。
イタリアの漁師料理が起源のチョッピーノは、複数の魚介を合わせてトマトベースで仕上げる煮込み料理ですが、素材の旨みを逃さないために、魚介を加えるタイミングをそれぞれずらします。火が通りやすいものを後から入れ、貝類からは出汁を引き出しながら、全体をまとめていく。料理の中で魚介が会話しているような仕上がりにしたい、という感覚でやっています。
パスタも同じです。魚介のパスタは、乳化のタイミングがすべてを決める。ソースと麺が一体にならないと、食べていて途中で飽きる。それが嫌なので、パスタを仕上げる工程は毎回手を抜かない部分です。
こういう料理は、ゆっくり食べてもらうことで完成します。急いでかき込む食べ方では、素材ごとの旨みの違いや、重なり方の面白さが分からない。だから「ゆっくりできる環境を作ること」は、料理のクオリティと切り離せない話なんです。
秋の三陸魚介を、どう皿に乗せるか
この記事を書いているのは10月下旬です。三陸の秋は食材が豊かになる時期で、牡蠣もこれから旬に向かっていきます。岩手・宮城の生産者から届く食材は、この時期から年明けにかけて状態がよくなる。それに合わせてメニューも変わっていきます。
秋のディナーで僕が意識しているのは、魚介だけで完結させないことです。岩手の「ありすぽーく」や東北産の野菜を組み合わせて、コース全体として季節感が出るように構成する。魚介料理と肉料理の順番、野菜の使い方、ワインとの合わせ方まで含めて、一つの流れとして設計しています。
東京で産地の魅力を伝える難しさについても別の記事で書きましたが、三陸と東京の距離をどう埋めるかは、僕が長年向き合っているテーマです。食材を届けるだけでなく、料理として完成させて初めて、産地の魅力が伝わると思っています。
現在の「旬の三陸×ウニ尽くし10品コース(8,800円)」は、ウニと三陸牡蠣・鮮魚を軸に、岩手・東北の肉や野菜を組み合わせた構成です。生牡蠣・焼き牡蠣・蒸し牡蠣など複数の調理法で牡蠣の異なる表情を楽しめるほか、旬の魚介を使ったカルパッチョやチョッピーノも含まれています。季節によって内容は変わりますので、詳しくはご来店時にお話しします。
まとめ|「新宿でゆっくり魚介を食べたい」に、ここで答えます
火入れのタイミング、塩をあてる順番、素材を重ねる仕方。どれも地味な話ですが、これが料理の差になります。繁華街の回転重視の店では、こういうことに手をかける理由がない。でもケラッセ東京には理由があります。ゆっくり食べてもらう時間を作ることが、この店の料理を完成させるからです。
新宿の騒がしい居酒屋ではなく、若松河田の住宅街で、三陸の牡蠣や魚介を料理として楽しみたい方に来ていただければと思います。
ご予約・お問い合わせはお電話でも承っております。
📞 03-6380-0253(営業時間:水〜日・祝日 15:00〜22:00/月火定休)
火入れのこだわりも、素材を重ねる料理の組み立ても、実際に食べてみないと伝わりきらない部分がある。「旬の三陸×ウニ尽くし10品コース」として今の季節の三陸食材を一皿ずつ味わえます。WEB予約から席とコースを同時に確定しておくと、当日をそのまま楽しめます。
