「東京で本当においしい牡蠣が食べられる店が見つからない」「生牡蠣はちょっと怖い」「焼き牡蠣しかないのか…」——こんな声を、お客様からよく耳にします。
あるいは逆に、「せっかく食べたのに、味が薄くてがっかりした」「磯臭さが気になった」という経験がある方も少なくないかもしれません。牡蠣は食材の中でも、産地・季節・調理法の三つが揃って初めて「おいしい」と感じられるもの。その三つのどれかがズレると、途端に魅力が半減してしまう——これが、東京で牡蠣料理を提供することの、本当の難しさだと思っています。
シェフの坂東です。今回は少し恥ずかしい話も含めて、三陸食材と向き合ってきた中での失敗や苦労を正直にお伝えしたいと思います。
こんな方におすすめ
- ✅ 東京でおいしい牡蠣を食べられる店を探している方
- ✅ 牡蠣や魚介に「当たり外れが多い」と感じてきた方
- ✅ 産地や旬によって牡蠣の味がどう変わるのか知りたい方
- ✅ チェーン店ではなく、食材に向き合っている店を探している方
- ✅ 新宿・若松河田エリアで落ち着いてワインと魚介を楽しみたい方

開店当初、「三陸の牡蠣」を東京で出すことへの自信が崩れた日
ケラッセ東京をオープンした2018年のこと。三陸の牡蠣に対する自信は、正直なところ相当なものがありました。岩手・宮城の生産者と顔が見える関係を築いて仕入れをしていたし、食材の素性には自信があった。「東京でこれを出せば、絶対に伝わる」と思っていたんです。
ところが、ある時期に「なんか今日の牡蠣、いまいちですね」とお客様に言われたことがありました。ショックでした。自分でも食べてみると——確かに、薄い。旨みが出ていない。産地は同じ、生産者も同じ。でも明らかに違う。
原因を突き詰めて分かったのは、「旬のタイミングを少し外していた」ということでした。三陸の牡蠣は、水温・プランクトンの状況・育ちの具合によって、同じ産地でも数週間単位で味が変わります。「〇月はこの牡蠣」という固定観念で仕入れていたことが、そのズレを生んでいた。産地とのつながりがあると過信していたことが、逆に盲点をつくっていたんです。
それ以来、仕入れのタイミングを生産者と都度確認し合うようにしました。「今週の牡蠣はどうですか」「今年は少し遅れています」——そういう会話が、今の仕入れの基本になっています。
「産地は同じでも旬がズレると味が落ちる」——この記事を読んで、牡蠣の仕入れと旬がいかにシビアかが伝わったかと思います。季節ごとにメニューが変わるケラッセ東京の最新情報は、LINE登録で受け取ることができます。友だち追加は無料で、登録後すぐに『生牡蠣10個盛り半額』の特典も届きます。
「調理法を変えれば伝わる」という思い込みが招いた失敗
もう一つ、苦労した話があります。旬の牡蠣が届いても、「どう料理するか」で伝わり方がまったく変わる——これを実感したのは、開店から少し経った頃のことです。
当時、素材がいいのだからシンプルに出せばいいという発想で、ほぼ生牡蠣だけのメニュー構成にしていた時期がありました。でもお客様の反応は、期待したほどではなかった。後でゆっくり話を聞いてみると、「生牡蠣はちょっと苦手で…」という方が意外と多かったんです。
牡蠣の魅力を伝えたい、でも生牡蠣が得意じゃない人にはその入口が閉じている。これは産地との関係がどれだけ深くても、料理の組み立てが変わらなければ解決しない問題でした。
そこから、蒸し牡蠣・焼き牡蠣・牡蠣を使ったパスタや温製の料理など、調理法のバリエーションを増やしていきました。生牡蠣が得意な方には産地の旨みをそのまま感じてもらい、加熱調理で食べたい方にはまた別の牡蠣の甘みや濃さを楽しんでもらう。牡蠣料理を生・蒸し・焼きそれぞれで楽しむ魅力は、こうした試行錯誤の中から自分なりに整理できていったものです。
✓ ここまでのポイント
- 三陸の牡蠣は「産地が同じ」でも旬のタイミングがズレると味が落ちる。生産者との継続的な対話が不可欠。
- 生牡蠣だけでなく、加熱調理のバリエーションを持つことで、より多くの人に牡蠣の魅力を届けられる。
- 「食材がいい=料理が伝わる」ではなく、料理の組み立てと食材の旬が揃って初めて「おいしい」になる。
「調理法を変えれば伝わる」という試行錯誤の末にたどり着いたコーススタイルは、季節ごとに内容が変わります。今の季節に何が入っているか、LINE登録をしておくと旬の情報がいち早く届きます。登録は無料、特典の生牡蠣半額もすぐに使えます。
「産地の話をしすぎた」という反省
料理の話と少し外れますが、これも大事な苦労話として書いておきます。三陸との関わりが深まるにつれ、料理を出しながら「この牡蠣は〇〇さんが育てた」「この魚は〇〇漁港から来ている」という話をするのが習慣になっていきました。
ある日、常連のお客様がこっそり教えてくれました。「坂東さんの話は好きなんだけど、今日は友達とゆっくり話したくて来たんだよね」と。
これは刺さりました。自分の中では「産地の魅力を伝える」という信念があったのですが、お客様にとってその食事の場で必要なものは、必ずしも産地の説明ではない。料理がおいしくて、場が心地よければ、それが一番の「伝わり方」なんだと気づきました。
今は、産地の話は聞いてくださる方にだけ、タイミングを見ながらする。料理そのものが語れているなら、言葉は少なくていい——そう考えるようにしました。三陸の食材を東京で料理する理由と、私のこだわりについては別の記事でも書いていますが、「伝え方」はまだ今も試行錯誤中です。
旬と産地と調理法——この三つが揃って初めて「東京でおいしい牡蠣」になる
失敗談ばかり書きましたが、こうした経験を経て今のケラッセ東京のスタイルがあります。
旬の牡蠣を旬のタイミングで仕入れる。生産者と密に連絡を取り合い、「今週はどうか」を確認する。そして、生でも焼きでも蒸しでも、その牡蠣の状態に合った出し方を選ぶ。これが、東京でおいしい牡蠣を提供するための、私なりの答えです。
「牡蠣好き」と「牡蠣が少し苦手」な方が同じテーブルにいても、どちらにも楽しんでもらえるように料理を組み立てる——それが、コース料理という形に結びついています。季節の食材を10品にわたって構成する中で、牡蠣・魚介・ウニをさまざまな調理法で届けるスタイルは、この苦労の積み重ねから生まれたものです。
牡蠣の産地・旬・調理法で変わる味わいについても別の記事でまとめていますので、牡蠣選びの参考にしてみてください。
まとめ|苦労話の先に、今のスタイルがある
三陸食材と向き合ってきた中での失敗は、今振り返ってもちょっと恥ずかしいものが多い。でもそのどれもが、今のケラッセ東京の料理の基準をつくってくれたものだと思っています。
産地のことは誰よりも知っているつもりでいたし、料理の腕には自信があった。でも「東京のお客様に、今この瞬間においしいと感じてもらう」ことの難しさは、30年の経験があっても毎回新しい問いです。
新宿・若松河田の小さな店ですが、今も試行錯誤しながら料理を出しています。もし「東京でちゃんとした牡蠣を食べてみたい」と思っている方がいれば、一度来ていただけたらと思います。
ご予約・お問い合わせはお電話でも受け付けています。
📞 03-6380-0253(水〜日・祝日 15:00〜22:00)
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