一皿ができるまでの裏側|三陸の旬を東京の食卓へ届けるシェフのこだわり

結論から言うと、「魚介料理をいろいろ食べたい」という欲求は、食べる場所ではなく、料理を組み立てる側の設計次第で叶えられるということです。一般的なレストランでは魚料理が一品か二品に絞られることが多い。でもそれは、魚介が難しいからではなく、仕入れの手間・鮮度のコントロール・調理の組み立て方に、相応の積み重ねが必要だからだと私は考えています。

シェフの坂東です。三陸の生産者と直接やりとりしながら食材を仕入れ、ケラッセ東京のキッチンに立って8年になります。今日は、普段お客様には見えていない「一皿ができるまでの裏側」を、少しだけ正直にお話しさせてください。

こんな方におすすめ

  • ✅ 魚介料理を一品二品で終わらせたくない方
  • ✅ 三陸の食材がどのように東京の食卓へ届くか知りたい方
  • ✅ 「旬を食べる」ということの意味を料理側から理解したい方
  • ✅ 新宿・若松河田エリアで魚介をしっかり楽しめる店を探している方
  • ✅ 生産者とつながった食を、外食の場で体験したい方
一皿ができるまでの裏側|三陸の旬を東京の食卓へ届けるシェフのこだわり | 三陸ワイン食堂 ケラッセ東京

「魚料理が少ない」のは、シェフが手を抜いているわけじゃない

外食で魚介を頼むとき、メニューに「本日の魚」が一品しかない、ということは珍しくありません。それを「物足りない」と感じたことがある方は、私のお客様にも多い。でも、その理由はシェフの怠慢ではなく、魚介を複数品組み立てるには、仕入れの設計そのものが違うからです。

魚は、今日来た食材が明日も同じとは限らない。産地・漁獲状況・季節によって、種類も状態もがらりと変わります。「カルパッチョに使えるか」「チョッピーノに向いているか」「生でいくか、火を入れるか」——これを判断するのは、仕入れた食材を目の前にして初めてできる作業です。

私が三陸の生産者と継続的につながりを持っているのは、この「目利き」と「信頼」を積み重ねるためです。顔の見える相手から届く食材は、鮮度だけでなく、「今週はこれが上がっている」という情報も一緒に来る。その情報を元に、メニューを一皿ずつ設計していきます。

なぜ私が三陸の食材にこだわり続けるのか、その背景については三陸の食材を東京で料理する理由とシェフとしての原点でも詳しく書いています。

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旬を「皿に乗せる順番」で設計する

たとえば9月の三陸。秋が近づくこの時期は、夏を超えた牡蠣が深みを増し始め、沿岸の魚介も脂がのってくる季節です。同時に、ウニは産地によって旬の波がある。岩手・宮城の肉や野菜も秋の顔に変わり始めます。

私がコースを組み立てるとき、「何を出すか」より先に「どの順番で出すか」を考えます。生のものから始めて、香りで引き、火を入れた料理でボリュームを出し、最後に余韻を残す。この流れを作れると、魚介だけで10品が一本の線になる。

たとえばある日のコースの流れをざっくりと言うと——三陸牡蠣の生から始まり、カルパッチョで旬魚の鮮度を感じてもらい、ワタリガニや旬の甲殻類で香りのある一皿を挟み、チョッピーノで魚介の旨みを煮出したスープ感覚の皿を出し、パスタや肉料理で全体のリズムを整える。こういう構成です。

「魚介ばかりだと重くなりませんか?」と聞かれることがありますが、それは一品の濃度と順番の問題です。設計さえ正しければ、10品食べ終わってもまだ飲める。それがワインに合わせる料理の醍醐味でもあります。

三陸の魚介がなぜこれほど料理の幅を広げてくれるのか、その背景は三陸の魚介がおいしい5つの理由と旬を東京で食べるということにまとめています。

✓ ここまでのポイント

  • 魚料理が少ない理由は「仕入れの設計」にある。生産者との継続的なつながりが複数品の魚介料理を可能にする
  • 旬の食材を「何を出すか」だけでなく「どの順番で出すか」まで設計することで、魚介料理が一本の食事の流れになる
  • 三陸の食材は、牡蠣・鮮魚・甲殻類・野菜・肉まで、コース全体を支えられる幅の広さを持っている

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お客様には言わないけれど、実はここが一番大変なところ

料理を食べているとき、お客様はその一皿の「前」を見ることはありません。でも料理の質の半分以上は、食材が届いてから皿に乗るまでの時間の中で決まっています。

私が特に気を使っているのは、鮮度の「使い切り」の設計です。魚介は、鮮度が高いうちに使えるメニューと、少し時間を置いた方が旨みが出るメニューがある。届いた食材をどの料理に当てるか——これを入荷のたびに判断しています。

牡蠣で言えば、生として出すのか、蒸して出すのか、焼くのか。これは「お好みで」ではなく、その日の牡蠣の状態を見て私が決めることです。身の締まり具合、塩味の強さ、香り——それらを踏まえて調理法を選ぶ。これが「素材そのものの魅力を生かす」ということの、実際の中身です。

もう一つ正直に言うと、三陸から東京へ食材を届ける物流の部分も、決して楽ではありません。産地との信頼関係を長年かけて育てていなければ、鮮度を保った状態で仕入れ続けることはできない。震災後に岩手へ移住して料理をした経験が、この関係性の土台になっています。

「何が食べられるか」を事前に決めない理由

ケラッセ東京では、コースのラインナップをあえて固定していません。「今日は何が届いているか」によって、当日の構成が変わります。これをお客様に伝えると、「それは不安じゃないですか」と聞かれることもある。

でも私の答えは逆で、その日の旬を食べてもらうために、あえて固定しないのです。9月に「秋の三陸」を食べに来てくれたお客様に、3か月前に決めたメニューを出すより、その週に三陸から届いた最良のものを出す方が誠実だと思っている。

ウニを中心に据えたコースを組むこともありますし、牡蠣が主役の日もある。季節の魚が主軸になることもある。それをワインと合わせながら、一皿ずつ「今日の三陸はこれです」とお伝えする。そういう食事の在り方を、私は大切にしています。

「生牡蠣を食べる店」だけではなく、三陸の食材をコースの流れの中でしっかり食べてもらいたい——そう考えてつくった旬の10品コース(8,800円〜)は、魚介好きの方にこそ試してほしい内容です。ウニ・牡蠣・鮮魚を複数の調理法で組み合わせ、季節によって内容を変えながら提供しています。

まとめ|一皿の裏には、産地と料理人の積み重ねがある

「魚介料理がもっと食べたい」という気持ちに、私は正直に応えたいと思っています。それができるのは、三陸の生産者とのつながり、鮮度と調理法の設計、そしてその日の食材を最良の形で出すという積み重ねがあるからです。

新宿・若松河田から徒歩3分という場所で、こういう料理が食べられる場所を作っているのは、東京にいながら三陸の旬を届けたいという、私の変わらない動機があるからです。

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魚介を複数の調理法で食べられる場所を探してこの記事を読んでくれた方に、まず一度「今日の三陸」を体験してほしいと思っています。食べログのWEB予約ページから空席確認とコース予約ができます。日時を決めたらそのまま予約が完結します。

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